現在インターネット上で「MBTI診断」と呼ばれているものの多くは、性格診断サイト『16Personalities』を利用したテストを指します。※本来、無料の16 Personalities診断と正式なMBTIはまったく別物ですが、本稿では便宜上、16 Personalities診断をMBTIと呼称します。1. なぜ今、中小企業でMBTIが必要なのか?成長産業での競争激化と中小企業の課題近年、AIやDXなどの新しいテクノロジーによって、多くの産業で新たな成長の波が訪れています。再生可能エネルギー、インバウンド、フードテック、地方創生ビジネスなど、これまでにない市場が次々と広がっています。こうした成長産業の中で中小企業にも大きなチャンスが生まれていますが、その一方で「変化に適応できない企業」は市場から取り残されるリスクも高まっています。特に、以下のような3つの構造的な課題が多くの中小企業に共通しています:課題1:2024年問題による人件費・物流コストの上昇→ 従来の働き方や業務プロセスが通用しにくくなっている課題2:利益率の低下→ 売上は維持できても、原価や人件費の上昇で利益が残りづらい構造課題3:差別化の困難化→ 商品やサービスの質だけでは、競合との明確な違いが出しづらいこのような時代には、「何をするか」だけでなく「誰とどう取り組むか」が企業の未来を左右すると思います。DXの本質は「人」と「チーム」の変革変化に対応するためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)は不可欠です。しかし多くの企業が、DXを「新しいITツールの導入」だと誤解し、形だけの改革にとどまってしまいます。実際には、DXの成否を決めるのは「技術」ではなく「人」、そしてチームとして機能するかです。DXを成功させる3つの要素:この3つを同時に整備することで、企業は変化に強く、持続的に成長できる組織になると見ています。では、その“人とチーム”をどう強くするか?その鍵となるのが「MBTI(性格特性診断)」です。MBTIを活用することで、社員一人ひとりの強みや特性を理解し、補完し合うチームをつくることが可能になります。人材配置に活用できるだけでなく、企業文化や組織力を強化するためのツールとして、今注目されています。中小企業の現実:新旧社員の衝突という組織課題大企業と違い、中小企業は限られた人で最大の成果を出す必要があります。しかし、ここで深刻な問題が発生します。よくある組織の悩み歴史のある中小企業では「新しいことをやるのが苦手」と言われがちです。実際にDXや新規事業を始めようとすると:これは「古参だから」ではなく、性格の違いかもしれません。多くの経営者が「古参社員が変化を嫌う」と考えがちですが、実際は性格特性の違いが原因である可能性があります。特に重要な4つの性格特性:S型(感覚型):過去の成功体験を重視、リスクを慎重に検討したいN型(直観型):新しい可能性を追求したいJ型(判断型):計画通りに進めたい、急な変更は避けたいP型(知覚型):柔軟に対応したい、状況に合わせて変えたい経営者に必要な組織的視点重要なのは、どちらが正しいかではなく「どういうチームであれば成功するのか」「どうすれば共存できるのか」を組織的に考えることです。できれば役職を無視して考えましょう。従来の安定した事業を維持する人材(S型の特性)新しいビジネスを創出する人材(N型の特性)両方をつなぎ、チーム全体を機能させるマネジメントこの人の特性を科学的に理解し、戦略的に活用するツールがMBTIです。2. MBTIって何?なぜ必要なの?MBTIの基本4つのポイントで性格を見ます:E(外向型)とI(内向型) E:初対面の人とも仲良くできる、チームを明るくしてくれるI:人と深く関わることができる、チームに深さを作ることができるS(感覚型)とN(直観型)S:今までの経験を大事にする、確実な方法を好む N:新しいアイデアが好き、未来の可能性を考えるT(思考型)とF(感情型)T:論理的に判断する、データを重視する F:人の気持ちを考える、チームの和を重視するJ(判断型)とP(知覚型) J:計画を立てて進める、締切を守る P:柔軟に対応する、状況に合わせて変える→ ここで重要なのは、「16種類」と個別に数えるのではなく、2^4(2の4乗)という構造で捉えることです。なぜ中小業にMBTIが必要?理由1:今までと違うことをする必要があるから今まで:同じやり方を続ければOK(S型が得意)これから:新しいことを始めないと生き残れない(N型が得意)理由2:人が重要だから中小企業は大企業よりも労働装備率が低く、人が重要人のパフォーマンスを最大限に発揮するためには人を機能的に捉えるのではなく、性格で捉えることが重要性格に応じた業務を依頼することが大事理由3:チームの力を最大化できるから一人では限界がある違うタイプの人が協力すると、もっと大きな成果が出る3. DXや新規事業を成功させるチームの作り方よくある失敗パターン多くの中小企業の社長や幹部はS型(感覚型)です。なぜなら:長年の経験を重視してきた「今までのやり方で成功した」と考えるリスクを避けたがる急激な変化を嫌うS型だけのチームでDXや新規事業をやると…「今のシステムで十分だ」「新しいシステムは使いにくそう」「お金をかけても効果が分からない」「楽に儲けたい」→ DXが進まない、新規事業は生まれない成功するチーム編成フェーズ1:アイデアを考える(N型が主役)NP型の役割お客様のニーズを聞き出す 「こんなサービスがあったら便利だよね」というアイデアを出す関係者をやる気にさせる 「業界の常識を破る」発想をする新しい技術と市場をつなげて考える 「なぜそのやり方じゃダメなのか?」を議論するお客様や取引先の立場で考える 「みんなが使いやすいシステム」を設計するフェーズ2:実際にやる(S型が主役)SJ型の役割プロジェクトのスケジュール管理品質チェック予算管理社員への説明・研修「変化が不安」な人をサポートみんなが使えるようにフォロープロジェクト全体の責任者最終的な意思決定他部署との調整よくある成功パターンパターン1:データ活用ビジネスN型のアイデア:「今まで蓄積した取引データを使って、市場分析サービスをやろう」S型の実行:既存システムとの連携、データの正確性チェックパターン2:プラットフォームビジネスN型のアイデア:「メーカーと小売店が直接やり取りできるサイトを作ろう」S型の実行:取引の信用管理、物流の仕組み作りパターン3:コンサルティングビジネスN型のアイデア:「長年の経験を活かして、他社の経営相談に乗ろう」S型の実行:過去の成功事例をまとめる、効果測定の方法を作る5. 実際にMBTIを導入する手順ステップ1:現状を知る経営陣のMBTI(16 personalities)診断 社長、専務、常務などの主要メンバー 各部長クラス結果を分析 「S型ばかりで新しいことが苦手?」 「I型ばかりで営業力が弱い?」 「J型ばかりで柔軟性がない?」問題点を特定 DXが進まない理由 新規事業が立ち上がらない理由ステップ2:チームを作り直すDX推進チーム(4人)N型とP型:2人(アイデア担当)S型とJ型:2人(実行担当)新規事業開発チーム(4人)N型メンバー:2人(企画・戦略)S型メンバー:2人(実行・管理)ステップ3:コミュニケーションを変えるS型メンバーへの説明方法「他社の成功事例」を具体的に示す「投資額とリターン」を数字で説明「段階的に進める」計画を提示「リスクを減らす方法」を明確にするN型メンバーへの対応方法「会社の将来ビジョン」を共有「自由に発想してもらう」時間を作る「新しいチャレンジ」を評価する制度6. MBTIを活用した組織づくり人材戦略の転換今までの採用方針「業界経験が長い人」を重視「真面目で安定した人」を好む「言われたことをきちんとやる人」を評価これからの採用方針「新しいアイデアを出せる人」も積極採用N型人材を全体の30-40%まで増やすS型とN型をペアにして仕事させる継続的な変化への対応実際の導入事例では「個々のメンバーがMBTIを理解することで、会社全体の意思決定が速くなった」という効果が報告されています。具体的な効果会議での議論が建設的になるお互いの得意分野を理解して協力する新しいアイデアと現実的な実行のバランスが取れるまとめ:MBTIで会社を変えるこれからの中小企業に必要なのは、技術の進化・環境の変化に対応するために、「人とチーム」をどう構築するかです。MBTIは性格の違いを理解し、ぶつかり合うのではなく補い合う組織をつくるためのツールです。N型が未来を描き、S型がそれを形にするJ型が計画を守り、P型が変化に対応するこのような多様性あるチームが、変化の時代を乗り越える力になります。MBTIは単なる診断ではなく、組織の成長戦略です。あなたの会社も、MBTIをきっかけに「変化に強いチーム」へと進化していきましょう