前回の記事では、MBTIという性格特性診断を使いながら、中小企業がどのようにチームを構築すれば、DXや新規事業に強い組織を作れるのかをご紹介しました。今回はその続編として、MBTIを実務でどのように活用していくのか、具体的な3つのステップに分けて解説していきます。変化の激しい今の時代、「何をやるか」だけではなく、「誰とどう進めるか」が企業の成果を左右します。性格の違いをネガティブに捉えるのではなく、チームの設計材料として前向きに活用する。それが今回のテーマです。ステップ1:まずは「自分を知る」ことから始めるどんなチームづくりも、自分自身の理解からスタートします。特に経営者やマネージャーが、自分の性格傾向と業務スタイルを客観的に把握することで、チームとの役割分担や相互理解がぐっと進みます。最近はChatGPTのような生成AIを使って、MBTIと自分の得意・不得意を入力することで、自分自身の強みや傾向を分析することが可能です。例:自分について(ChatGPTに質問)下記が自分の特徴です。経営者としての強みや意識するべきことを、わかりやすく教えてください。性別:男性生年月日:1990年1月1日MBTI:INFP強み:新規事業の立ち上げ、周囲を巻き込む力弱み:メールの返信が遅い、文章化に時間がかかるAIによる分析結果(例)理念ドリブンで、人を惹きつける力 あなたは「こうありたい」という理想や想いを軸に行動できるタイプです。強いビジョンを掲げ、そこに共感した仲間が自然と集まる力を持っています。新しい価値をつくる起業家タイプ 前例のないことや、未開拓の分野にも恐れずに挑めるので、新規事業の立ち上げには非常に向いています。市場にないものをつくることが得意です。意識すべきこと(例)タスク処理型の動きが苦手 メール返信や文章化が遅れがちなのは、頭の中で熟成してから動くINFPらしい傾向。 → ルーティン化やサポート役の明確化で、判断や出力のスピードを補完しましょう。現実と理想のギャップに疲れやすい 理想が高いぶん、現実が追いつかないと落ち込みやすい傾向があります。 → 「7割でOK」の基準を持ち、チームと協働して前進する癖をつけると継続しやすくなります。このように、MBTIの自己理解は「自分の苦手を正す」のではなく、「どう補うか」に視点を置くことが重要です。ステップ2:自分とマネージャーの関係性を分析する次に行うべきは、自分とマネージャー陣のMBTIを入力し、チーム全体の特性を把握することです。特に中小企業では、マネジメント層の性格バランスがチーム文化を大きく左右します。自分と価値観や思考パターンが違う人を「合わない」と思うのではなく、「補完関係」として認識することで、意思疎通が劇的に変わります。例:代表:INFP営業部部長:ENFJ(人を巻き込みながら成果を出すタイプ)製造部部長:ISFJ(現場に寄り添い、安定した運営を得意とするタイプ)チームの強み(例)共感と信頼をベースにした関係性 全員が「F(Feeling)型」で感情に敏感なので、心理的安全性が高く、信頼関係の深いチームになりやすいです。社員や顧客にも丁寧に接するので、信頼される組織文化が育ちやすいです。柔軟で変化にも適応しやすい INFP・ENFJはどちらも柔軟で変化を受け入れられるタイプ。ISFJも信頼できるリーダーがいれば変化に合わせて安定運用を継続できます。意識すべきこと(例)衝突を避けすぎる傾向がある 全員が「F型」で気を使い合うため、意見の違いや不満が表に出にくいことがあります。 →ロジカルなT型人材(参謀・管理会計・IT側)をチームに入れると意思決定が安定します。内向型中心で外部への発信力に課題が出やすい INFPとISFJは内向型(I型)。ENFJの営業部長が社外対応の要になりますが、ENFJが疲弊すると外との接点が細くなる恐れも。 →営業やマーケティングに外向的な「E型」人材を補強するのがおすすめです。MBTIを活用することで、社内の会議や人間関係に対する「腹落ち感」が増し、判断のスピードが上がります。ステップ3:各マネージャーもチーム単位で活用する最後に、これらの分析を各部門のマネージャーに展開し、チーム単位でもMBTIを活用してもらいましょう。具体的には:各部門でメンバーのMBTI診断を行うチーム内のバランスや相性を確認する業務アサインやコミュニケーション方法を調整するこれを実施するだけで、以下のような変化が期待できます。部門内での変化(例)ISTJ(慎重・計画型)とENFP(自由・直感型)が同じチームにいた場合、役割を分けることで対立を防げるISFJ(サポート型)が多いチームでは、気配りは行き届く一方、アイデア創出が弱くなるのでN型メンバーを補強するチームで「なぜこの人はこういう行動をするのか」が分かるようになり、評価の観点も変わるおわりに:社員の“性格”を知ることが、経営の第一歩になる中小企業の経営は、人に大きく左右されます。人が少ないからこそ、一人ひとりの強みや弱みがチーム全体の成果に直結します。にもかかわらず、私たちは普段、「なんとなくの感覚」や「経験則」だけで人を見てしまっていることが多いのではないでしょうか。MBTIは、そうした感覚を共通言語として整理し、「性格特性」という視点で人を見るためのツールです。「なぜこの人は話を急がせるのか」「なぜこの人はメールに返信が遅いのか」「なぜこの人は新しいことに前向きなのか/慎重なのか」こうした日々の“もやもや”が、MBTIを通じて構造的に理解できるようになります。そしてその理解が、チームの配置やコミュニケーション、意思決定を一段深く、そしてスムーズなものにしてくれます。人を変えることはできませんが、活かし方を変えることはできます。変化の時代において必要なのは、「全員を同じ方向に揃えること」ではなく、「違いを活かして、補い合える組織をつくること」です。MBTIは、その第一歩としてとても有効な手段です。参考中小企業の社長のためのMBTIチーム作り DXと新規事業で会社を変える方法