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5年取り組んでわかった、卸売FAX受注DXの「本当の壁」

小野 真彰
小野 真彰
1月 17, 2026 8分で読めます

こんにちは、卸売(問屋)・専門商社に大きな可能性を感じている小野です。

かれこれ5年ほど、この課題に取り組んできましたが、いまだに解決の糸口は見えていません。卸売や専門商社で働く方や経営者の方は「いずれ誰かが解決してくれるだろう」と待っている状況だと思いますが、解決したいと考えているエンジニアの母数が少ないため、待っているだけでは難しいと思います。そもそも日本の商流における課題なので、国外で解決が進むことはまずありません。

卸売と商社が大好きな数少ないチームですので、ぜひ一緒に考えていきたいと思っています。

FAXは本当に「悪」なのか

FAXが悪者として捉えられることも多いのですが、在庫を一部しか持たない卸(メーカー直送が存在する)では、在庫を押さえたかどうかを注文者に伝えるためにREFAX(リファックス)していたりします。そのため、業務フロー上FAXを止めることは難しいと考えています。

社内にエンジニアがいれば独自の注文サイト(ECサイト)などを作って、在庫状況をメールで返すこともできるでしょう。しかし、エンジニアを抱える卸売業を見たことがありません..(あっても大抵の場合1〜2年で離職してしまいます)。

「AIならできる」の落とし穴

前提として、AI-OCRの手書き識字率は非常に向上しています。GCPやAzureのOCRエンジン、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを使えば、手書きも割と正確に読み取れます。

では、何が難しいのか。

「100%正しくある必要がある」 ということが一番の問題です。現状のAIは複合的な課題解決には80〜90%くらいの精度で、最後は人間が対応するしかありません。ただ、それだと営業事務の方は「最初から私が処理したほうが早い」となり、導入を断念してしまう。結果として「卸売業の課題解決はスタートアップには難しい」となり、DX化が進まない悪循環が起きます。

とはいえ解決していきたいと思っているので、一緒に取り組んでいただける卸売企業やエンジニアの方のために、今まで見てきた経験から具体的に何が難しいのかを紹介します。

「我こそは解決できる」というエンジニアの方や、一緒に取り組んでいただける卸売業者様がいれば、ぜひご連絡いただけると嬉しいです。ちなみに「アニマルオフィス」は解決に少しずつ近づいている気がします。
2026年中にはなんとかしたい。

難しい理由①:「いつものxxx」問題

卸売(問屋)を最近始めたという企業はほとんどなく、多くは50年以上の歴史がある企業です。すると、毎週のように手書きで発注を行う得意先は、商品名を書くことが面倒になります。その結果、「いつもの醤油をお願いします」と注文してくるのです(本来の商品名は「ヤマミ醸造 小麦フリー国産丸大豆たまり 18L」)。

単にOCRしただけでは商品を突合することが難しく、OCRの導入を断念することになってしまいます。

→ 解決の方向性: 基幹システム内の過去注文データと突合し、得意先の受注リストから割り出すことができれば解決できそうです。ただし、得意先名を取得するためにFAX注文用紙の上下左右どこかに書いてある得意先情報を読み取る必要もあります(ゴム印のケースや手書きのケースなど様々)。

難しい理由②:料金書いてない問題

ほとんどのFAX注文書には料金が書いていません。そもそも取引開始時に「言い値(値引率)」で料金が決まっていたりするので、注文者側(特に飲食店周り)も料金を把握していないケースがあります。そうすると注文書には「(商品コード)、商品名、数量」だけで注文が届きます。

さらに、料金が間違っているケースもあるので、結局営業事務の方が長年の経験と目視で確認をして料金を修正する必要があります。

→ 解決の方向性: 基幹システムの商品マスタと得意先別価格マスタ、ランク別価格マスタがあれば、読み取ったデータから突合して解決できそうです。

難しい理由③:フォーマットバラバラ問題

これも根深い問題です。卸売が立場上弱い(と感じているケースが多い)ので、注文者側のフォーマットで発注を行います。ひどいケースだとチラシの裏などに殴り書きで注文してきます(実際にはめちゃくちゃ多い)。ちなみに、商品名がわからないからという理由で絵が描いてあることもあって、さすがにそれを注文として捉えるのはどうなのかと思いました…。

→ 解決の方向性: 売上が20億円ほどの卸売では、月の得意先がおおよそ100〜200件ほどになるので、FAXの注文書が100種類を超えます。デジタル文字の注文書もあれば手書きの注文書もあります。汎用的なモデルを作り学習し続ければ、多少解決できる気がします。

難しい理由④:基幹システムにCSV取込がない

これは結構ひどいと思っています。

OCRシステムで解決の目処が見えた会社でも、利用している基幹システムにCSVの取込口がない場合、人間が手入力する必要があります。もしくはRPAを活用する必要があり、「そこまでは投資が難しい」という理由で導入が断念されてしまいます。

→ 解決の方向性: CSV取込機能があるアニマルオフィスのような販売管理システムに乗り換えるか、ベンダーに依頼して取込口を実装してもらう必要があります。ベンダーに依頼する場合はおおよそ100万円ほどの見積もりになると思います(CSV取込をするだけでその費用を払える卸がどれだけあるか…別途OCRシステムの費用もかかるのに)。ちなみにAPI取込はまずありません。そもそもインターネットに繋がっていないケースも多々あります。

難しい理由⑤:事務の方の入力が早すぎる

電卓を打ち込むのが早い方を見たことがあると思いますが、それと同じくらいFAX注文の内容を基幹システムに打ち込む速度が速いです。

ただ、この作業は生産性を向上することが難しく、人件費が上がらない・上げにくい問題になっています。

→ 解決の方向性: UI/UXが超重要です。A4用紙2枚くらいの注文量でも5〜10分ほどで入力が完了してしまいます。それより早く正確に受注入力を終える必要があります。また、空いた時間でその方がどのように生産性を向上できるのかも併せて考えていく必要があると、個人的には思っています。

解決の糸口

難しい理由はこんなところでしょうか。
続いて、上記の解決を図るために卸売業が取り組んでおくと、進めるのがスムーズになりそうな内容を書いてみます。

ヒント①:商品コードをつける

メーカーの商品コードではなく、自社独自の商品コードをつけることが重要です。これだけで識字率が大きく向上します。また商品の統一もできるようになります。

できれば頭文字は「P」などの英字にしましょう(例:P0001)。数字だけにすると後でゼロ埋めすることになり、CSVやExcelで開いたときに先頭の0が消えてしまうことがあるためです。

ヒント②:カタログを作る

せっかく商品コードをつけたのであれば、注文しやすいようにカタログを発行しましょう。Webカタログよりも紙カタログのほうが好まれる傾向があります。メーカーのカタログを配るだけでなく、自社オリジナルのカタログを作成して営業に活用すると効果的です。街の印刷会社に相談してみてください。

ヒント③:注文書のフォーマットを用意する

自社フォーマットを作成し、そのフォーマットで注文してもらうようにしましょう。経験上、すべての注文をフォーマットに合わせてもらうことは難しいですが、5割程度ならいけるケースが多いです。これだけでもだいぶ変わります。

OCRに適したフォーマットというものが存在します。例えば、商品コードの枠が狭く文字が枠線に近づいてしまうと、OCRエンジンによっては「1」と誤読される可能性があります。行番号ともできるだけ離すように空白を設けたほうが良いです。

また、1枚にできるだけ多くの注文が入るようにしましょう。なぜなら、行が足りないと1行に2商品を書いてくるケースがあるからです…(つらい)。

ヒント④:BtoB ECサイトを用意する

卸売は得意先別単価やランク別単価が存在するので、通常のECサイトでは対応が難しいと思います。「Bカート」であればランク別単価や得意先別単価の設定が可能です。

「お客様が高齢化していてECサイトでの購入は現実的ではない」と思うかもしれませんが、既存のお客様だけでなく新規のお客様の獲得も狙うことができます。

アニマルオフィスとしての取り組み

最後に、アニマルオフィスでは上記の課題に対してどのような取り組みをしているのかご紹介します。

こだわり①:UI/UX

受注の入力画面と注文書を横並びで確認でき、行明細をクリックすると注文書側がフォーカスされるようにしています。数十明細あるような注文書でも、どの行を読み取っているのかがわかり、入力がスムーズになります。

こだわり②:全文検索

受注明細入力には全文検索(Meilisearch)を採用しており、高速に商品をサジェストできます。LIKE検索よりも強力で、例えば「ユナイテッドアスレ 5768-01 002 ブラック / XL」という商品を「5768 ブラック」で検索してもヒットします。AIの読み取りミスがあっても、高速に補完できるようにしています。

こだわり③:商品の価格バリエーション

アニマルオフィスはそもそも販売管理システムなので、得意先別単価・数量別単価・ランク別単価を保持できます。AI-OCRで読み取った情報を自社データと突合し、自動で単価を表示させることができます。

こだわり④:API連携

ご要望に応じたAPIを開発できるため、自社の業務に合わせた接続が可能です。基幹システムはもちろん、ZapierやYoomなどの自動化ツールとも連携し、FAX注文書の自動アップロードなどにも対応できます。

正直、世の中にあるAI-OCRツールと比較するとできることは限られていますが、卸売や専門商社に必要な機能は整えつつあります。現在は商品コードをベースとしたOCRに対応している状況で、今年は商品名から受注データに変換する部分に取り組んでいきたいと考えています。

気になる方はぜひお気軽にお問い合わせください。

小野 真彰

この記事を書いた人

小野 真彰

卸・専門商社向け販売管理システム「アニマルオフィス」を開発する株式会社mobの代表。業務課題の解決に取り組むのが大好きで、エンジニアとしても活動しています。ビールを飲まないのに最近痛風になりました。

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