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エンジニアがいない会社が「AIで基幹システムを内製」してはいけない理由

小野 真彰
小野 真彰
7月 9, 2026 5分で読めます

「バイブコーディング」が流行っていますね。
生成AIに日本語で指示するだけでコードが書け、動くアプリができてしまう。プログラミング未経験の方が業務ツールを作った事例はXを中心に溢れていますし、「もう開発会社もSaaSも要らないのでは」という空気すら生まれつつあります。

そこで最近、受発注や在庫管理に課題を抱える企業から、こんな相談が増えました。「うちの業務は特殊でパッケージが合わない。AIを使えば、自社専用の基幹システムを自分たちで作れるのではないか」。

結論から言うと、エンジニアが社内にいない会社がこれをやるのは、数年後の経営リスクをほぼ確実に仕込む行為です。ただし、AIでの内製がすべてダメという話ではありません。

今回は「やっていい内製」と「やってはいけない内製」の線引きの話です。

AIが下げたのは「書くコスト」だけ

まず押さえたいのは、生成AIが劇的に下げたのはコードを書くコストであって、システムを動かし続けるコストではない、という点です。

ソフトウェアは完成した瞬間から手がかかり続けます。OSやライブラリは更新され、セキュリティの欠陥は次々と見つかり、インボイス制度のような法改正や取引先のフォーマット変更も止まりません。ソフトウェア工学の世界では古くから、ライフサイクル全体で見れば初期開発よりも運用・保守にかかるコストの方が大きいと指摘されてきました。

AIは「作る日」を短くしてくれますが、その後の何年もの「動かし続ける日々」は丸ごと残ります。

サーバー代と「見張る仕事」は残る

さらに見落とされがちなのがインフラです。

システムはサーバーの上で動いており、サーバー代は毎月発生し続けます。しかも要件が増えるほど構成は膨らみます。たとえば「商品名や取引先名で全角・半角どちらでも検索したい」という一見シンプルな要望も、データ量が増えれば全文検索用のサーバーを別に立てることになり、構成も費用も一気に複雑になります。

加えて、動かし続けるには「見張る仕事」が要ります。エラーログの監視、障害発生時の深夜対応、バックアップの確認、不正アクセスの検知。エンジニアのいない会社では、そもそも「いまシステムが健康かどうか」を判断できる人がいません。気づいたときには受注データが数日分消えていた。

基幹システムでは、それが即、経営の危機になります。

線引きは「可逆」か「不可逆」か

では、AIでの内製はどこまでやっていいのか。判断基準はひとつです。

捨てて作り直せるもの(可逆)は自分たちで作ってよい。データが入って捨てられなくなるもの(不可逆)はやめた方がいい。

社内向けの集計ツールや資料の自動生成のように、失敗しても捨てて作り直せるものは、バイブコーディングの格好の題材です。壊れても誰も困らず、学びだけが残ります。一方、受注・在庫・請求のデータが日々蓄積されていく基幹システムは違います。データが入った瞬間から「捨てて作り直す」ことができなくなり、設計の失敗・データ破損・セキュリティ欠陥が、取り返しのつかない形で残り続けます。その設計が5年後に耐えるかどうかの責任を、AIは取ってくれません。

不可逆は任せて、可逆だけ作る

私たちがおすすめするのは、「不可逆な部分は任せて、可逆な部分だけAIと一緒に作る」という役割分担です。

販売・在庫管理システム「アニマルオフィス」は、REST APIを公開しています。受注・在庫・請求といったデータの保管と管理——最も不可逆な部分はアニマルオフィスに任せていただき、皆さんが実際に触る画面(フロントエンド)は、APIを通じて自分たちで自由に作れます。Excelにたとえるなら、Excel本体はこちらで作るので、皆さんはその「見せ方」や「入力の仕方」だけを、業務に合わせて何通りでも作れるイメージです。

現場専用の入力画面、自社の帳票に合わせた出力、AIと組み合わせた業務ツール。「その画面の保守は結局誰がやるのか」と思われたかもしれませんが、ここで可逆・不可逆の線引きが効きます。画面が壊れても、データは無傷でアニマルオフィス側に残っています。最悪、壊れた画面は捨てて標準の管理画面に戻ればいい。だからこそ、バイブコーディングで気軽に作れるのです。バックアップ、セキュリティ更新、法改正対応、サーバー監視。失敗が許されない側は、すべてアニマルオフィスが担います。

しかもこの土台は汎用のデータベースではありません。200社を超えるメーカー・卸売・商社の現場から生まれた業務基盤です。FAX・電話・メールが混在する受注も、得意先ごとに違う単価ルールも、引当や在庫の考え方も、一から発明する必要はなく「呼び出すだけ」で済みます。

なお、API連携/Web EDIは Proプラン(月額125,000円・15名まで) の機能です。初期費用は0円で、標準UIだけを使うStarterプランは月額6,000円から始められます(料金プラン)。「まず標準UIで運用を始め、必要になった画面だけ後から自分たちで作る」という進め方もできます。

作らない勇気ではなく、作る場所を選ぶ賢さ

バイブコーディングの時代に必要なのは、「作らない勇気」ではなく「作る場所を選ぶ賢さ」です。

失敗が許されない土台はプロに任せ、自社らしさが出る部分だけをAIと身軽に作る。エンジニアがいない会社にとって、これが最も現実的で、最も安全なAI内製のかたちだと私たちは考えています。実際、標準UIをそのまま使う導入から、一部の画面だけを自社で作る導入、バックエンドだけを使って画面はすべて自社開発する導入まで、規模に応じて選べるようにしています。

受注業務そのものをどう軽くするかは受注業務を効率化する5つの手順でも解説しています。

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小野 真彰

この記事を書いた人

小野 真彰

卸・専門商社向け販売管理システム「アニマルオフィス」を開発する株式会社mobの代表。業務課題の解決に取り組むのが大好きで、エンジニアとしても活動しています。ビールを飲まないのに最近痛風になりました。

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